商品説明：
　モスコバイトとシャモサイトの激しい干渉に、魚卵のように連なり美しく輝くアポフィライト、そしてセルフヒールドで両錐という、見所が盛沢山の贅沢なロシア産スモーキークォーツです。

各鉱物の特徴：
＜煙水晶(スモーキークォーツ/Smoky Quartz) - SiO₂ / Trigonal - ＞
　水晶中のアルミニウム・イオンが放射線に反応することにより、このように茶色又は黒っぽい色になります。この原理を利用した人工着色のものもありますが、いずれも安全性の面で問題はありません。こちらは天然の煙水晶です。光を透過させない程に黒い煙水晶はモリオン(黒水晶/Morion)とも呼ばれています。
＜白雲母(モスコバイト・マスコバイト/Muscovite) - KAl₂(Si₃Al)O₁₀(OH)₂ / Monoclinic - ＞
　雲母(Mica)グループに属する白雲母は花崗岩およびそのペグマタイト、また微粒のものは片麻岩や結晶片岩に含まれ、無色、緑や赤味がかった灰色、褐色から白色で六角板状や葉片状、鱗片状の集合体で産出します。アルミニウムを多く含み、一方向の顕著な劈開 が特徴です。
＜緑泥石(クローライト/Chlorite) - A_5-6T₄Z₁₈ (A = Al, Fe²⁺, Fe³⁺, Li, Mg, Mn, or Ni / T = Al, Fe³⁺, Si, combination / Z = O and/or OH) / Monoclinic - ＞
　10数種ある緑泥石のグループの総称で、種によってマグネシウムや鉄、アルミニウムなどを主成分とします。鉄の含有率に比例して色調が濃くなり黒に近付きます。輝石や角閃石、黒雲母などが変質した石として、火成岩中や熱水鉱床の中にも広く見られます。独立した鉱物名ではありませんが、不特定な緑泥石グループの鉱物のことを単に緑泥石と呼ぶのが通例になっています。
＜魚眼石 (アポフィライト/Apophyllite)＞
　弗素魚眼石(Fluorapophyllite-(K) / KCa₄Si₈O₂₀F · 8H₂O / Tetragonal)、水酸魚眼石(Hydroxyapophyllite-(K) / KCa₄Si₈O₂₀(OH,F) · 8H₂O / Tetragonal)、ソーダ魚眼石(Fluorapophyllite-(Na) / NaCa₄Si₈O₂₀F · 8H₂O / Orthorhombic)の三種類を含めたグループ名で、最も普通に産し色調も鮮やかなのが弗素魚眼石です。弗素魚眼石と水酸魚眼石との違いは、結晶構造中で同じ位置を占める弗素と水酸イオンの量比で、ソーダ魚眼石と、それ以外の魚眼石との違いは、カリウムとナトリウムの量比になります。無色、白色、緑色、黄色、ピンク、菫色、褐色など多彩な色調を示し、玄武岩の空隙に、葡萄石(Prehnite)、輝沸石(Heulandite)、束沸石(Stilbite)、ソーダ沸石(Natrolite)、方沸石(Analcime)、ダトー石(Datolite)などを伴って産出する他、熱水鉱脈や接触交替鉱床にも産します。正方錐形または柱状で、柱が短くなって立方体や板状になることがあり、柱面の縦の条線も特徴的です。結晶を先端から見ると、光が真珠光沢の劈開面に反射し、魚の眼のように見えることから”Fish-eye stone”の別名を持ち、日本では魚眼石と訳されました。熱すると葉片状に剥離することを表したギリシャ語が、鉱物名”Apophyllite”の由来になっています。

▲▼　非常に透明度の高い端正なスモーキークォーツに、モスコバイトとシャモサイトの大胆な干渉が入っています。

▲▼　表面のクレーターは主にシャモス石によって作られているようです。蛇行してうねるような特徴的な痕跡が実に格好良いです。

▲▼　鋭い爪か牙で切り裂かれたような激しい干渉痕に思わずゾクゾクします。

▲▼　瑞々しく透き通った結晶に、贅沢にも深く爪痕が刻まれている姿は圧巻です。

▲▼　上下逆にしての撮影です。実は両錐のポイントになっていて、湖面に広がる波紋のような美しいセルフヒールドが広がっています。

▲▼　クリアで微細なアポフィライト（fluorapophyllite-(K)／弗素魚眼石）の結晶が、魚卵状に連なって瑞々しく輝いています。よく見るとこちら側の意外に広い範囲に結晶しています。

▲▼　クォーツとピロータイトのサイズバランスが実に絶妙なのも、この標本の隠れた魅力の一つです。見え隠れするピロータイトが何とも贅沢で嬉しい限りです。下画像のセルフヒールドも秀逸です。

▲▼　スモーキーの瑞々しい透明感と、共生鉱物の荒々しいまでの力強さとのコントラストが非常に印象的な標本です。ルーペでご覧いただくと、各鉱物の生成や変質の過程をダイジェストで見ているような面白さもあります。斧石の名産地ながらクオリティの高いスモーキークォーツも産する、嬉しい産地からの興味深いポイントです。