商品説明：
　透き通るようなマスカット色と、緻密な立体結晶模様が大変美しいダトーライトに、キャルコパイライト混じりのスファレライトが乗った、メキシコ産のスタイリッシュで見応えのある標本です。

各鉱物の特徴：
＜ダトー石 (ダトーライト/Datolite) - CaB(SiO₄)(OH) / Monoclinic - ＞
　電気石(Tourmaline)や斧石(Axinite)、ダンブリ石(Danburite)等と同じく硼素を含む珪酸塩鉱物で、板状、短柱状の自形結晶の他、球状集合体、塊状で、火山岩中の熱水脈や晶洞中に、方解石(Calcite)や沸石(Zeolite)、ブドウ石(Prehnite)、斧石、緑泥石(Chlorite)等を伴って産出することが多いです。色調は無色透明〜白色、灰色、淡い緑〜黄緑色、青色、ピンク色等と幅広く、ガラス光沢〜油脂光沢を示します。肉眼的な結晶を示さず、無色半透明や淡紫色、淡紅色等を帯びるぶどう状の集合体は、ボトリオ石(Botryolite)という亜種名が付いていて、日本でも愛媛県槙野川の安山岩の空隙で沸石や魚眼石(Apophyllite)、斧石等と共に産する、ピンク色のものが有名です。
＜閃亜鉛鉱 (スファレライト/Sphalerite) - ZnS / Isometric - ＞
　純粋成分の無色や白から、鉄の含有量の増加と共に、透明薄黄緑色(Cleiophane)、黄褐色、赤褐色(Ruby Blende)、黒色不透明(Marmatite)と色調が変化していく鉱物で、日本でも透明感のある黄褐色〜赤褐色のものはべっ甲亜鉛の名で親しまれています。六方晶系のウルツ鉱(Wurtzite)とは同質異像で、自形結晶が明瞭な場合のみ肉眼でも識別できます。方鉛鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱等と共に、 熱水鉱脈、黒鉱鉱床、接触交代鉱床等に産出し、結晶形態は四面体、八面体、十二面体と多様でスピネル式双晶も多く見られます。方鉛鉱(Galena)や白鉄鉱(Marcasite)等を含む褐色の層状鉱はシャーレンブレンド(Schalenblende)という鉱石名で呼ばれる他、閃亜鉛鉱の二次鉱物としては、菱亜鉛鉱（Smithsonite）、異極鉱(Hemimorphite)、水亜鉛銅鉱(Aurichalcite)などがあり、登場する機会の多い鉱物です。
＜黄銅鉱 (キャルコパイライト/Chalcopyrite) - Cu¹⁺Fe³⁺S₂ / Tetragonal - ＞
　扁平な三角形の四面体や塊状を主とする真鍮色金属光沢で、熱水性鉱脈や接触交代鉱床、黒鉱鉱床等にほぼ常に黄鉄鉱(Pyrite)と共に産出します。黄鉄鉱とは濃い黄色味や軟らかさ、条痕色が緑っぽいこと等で判別できる他、黒褐色に変色し易く、酸化被膜によって虹色の干渉色を生ずることも特徴です。一個の結晶の両側に二個の小結晶が双晶関係をもって結合した耳付双晶や、荒川鉱山の三角銅又は三角式黄銅鉱と呼ばれる三角形のシャープな結晶など、美しく特異性のある結晶標本には一定の人気があります。

▲▼　ダトーライトならではの独特の質感と透明感、色合いに刻まれた、果てしなく緻密な結晶模様に圧倒される標本です。

▲▼　中心に置かれたスファレライトが一部キャルコパイライトに置き換わっています。少しずれますが国内外諸氏の"Chalcopyrite Disease"（黄銅鉱病変）のワクワクするような論文を思い出します。

▲▼　何処を取っても格好良いです。ミクロ化して標本上を歩き回りたくなります。下画像、短柱状の結晶がニョキニョキと伸びていて面白いです。

▲▼　上下それぞれ真上側と底面側です。底面側にもキャルコパイライト混じりのスファレライトと、小さくて少量ですがキュービックパイライトの群晶が見られます。底面側はダトーライトの結晶模様がさらに緻密化しています。

▲▼　スファレライトの荒さもまた格好良いです。鼈甲色の部分も散見されます。先の論文の件で思い出しましたが、キャルコパイライトを一部内包（置換）していても、スファレライト中の鉄の含有量との関連性は特に見られないそうです。一般的な王道から逸れた鉱物は、色々な面での鉱物の面白さを再確認させてくれるので楽しいです。視覚的にもこの標本は素晴らしいと思います。